村上祥子の食育コラム (2003.5.3)

からだと食事の関係を わかりやすく 解きあかすことが、食べ力を養う第一歩です

“食べること”が身についていれば、世界のどこにいって暮らそうとも、健康をそこなうこともなく、人生を自信をもって選んでいくことができる。
“食べ力(ぢから)”を養えば“生きる力”を手に入れたも同然。
これこそ、大人が子どもに伝えることのできる、いちばん命の長い贈りもの、と考えて、子どもたちと接してきました。
野菜たっぷりの一汁二菜。
日本型食事はアメリカで見直されました。


高度経済成長をとげた現代日本。
家電製品の完備と家族の少数化は、食卓の風景をすっかり変え、食育を進める上での二大ネックとなっています。
ひもじい思いをしたことがない親世代も、なぜ食事をしなくてはならないかが、わからなくなっているフシもあり、まして子どもが三食を考えるはずもなし。
食育といっても、家庭に向けてできるのは、朝食と夕食について、子どもの両親や祖父母たちに情報を発信すること。
昼食のことは、学校給食にたよらざるをえないのが実情です。


ところが、日本には万全にして最強の食べ方があったのです。
ごはんをベースに一汁二菜、野菜をたっぷりとる日本型食事。
これは、もともとアメリカの上院で“アメリカ人の健康をまもるための検討委員会”が、めぼしい国の国民栄養調査のデータをもとに検討したところ、日本人の食事のとり方が理にかなっている、目標にかかげては、という答申が出されて、注目を集めることになったのです。


食べ力には“ごはん食べ力”、“お肉や魚食べ力”、“野菜食べ力”があります。
日本型食事のよさに私たちも認識を新たにした今、命をつないでいくために、働きつづける偉大な精密機械である人間そのものと食事との関係を、わかりやすく子どもたちに解きあかすことで、“食べ力”を養う第一歩を進めたいと思います。
まず、どんなことがあっても欠かすことのできない水分。


その次が“ごはん食べ力”。
いわゆる炭水化物を食べること。
炭水化物はエネルギー源という表現をしますが、一日あたりの所要量のうち、3分の1は仕事やスポーツなどに、残りの3分の2は脳細胞が消費。
「ほっぺをさわってごらん」「あったか〜い!」。
そう、眠っている間もおふとんの中はぽっかぽか。
みんなが休めをしていても、知らないところで脳は指令をどんどん出して一日中働いているからあったかい。


次が“お肉や魚食べ力”。
血液をどんどんからだ中に送りつづけている心臓も、酸素を供給する肺も、もどってきた血液を濾過する腎臓も、みんなのお目々もお手々の筋肉も、すべてがたんぱく質でできているから。
毎日毎日、新しい細胞を作り、古い細胞はこわして入れかえるのです。


そして“野菜食べ力”。
野菜はビタミンの供給源。
ビタミンは日本語にいいかえれば補酵素。
食事を分解する酵素は人間がからだの中にもっているけれど、補酵素はもっていないのです。
外から補うしかないのです。
みんなエネルギーのもとは食べているけれど、エネルギーにかえるもとは食べているのかな?
ビタミンB1は炭水化物をブドウ糖に、ビタミンB2は脂肪を脂肪酸に分解しつつ、エネルギーをうみだすときに助けてくれる補酵素。
食べたものを皮下脂肪にするか、どんどんエネルギーにかえて、イキイキした疲れしらずのからだにするか、食べたたんぱく質を効率よく分解して、からだのすみずみまで運び、抜群のプロポーションを作りあげるかは、野菜や海草の食べ方次第。

ざっとこんなふうに、全国の学校に出向いては、子どもや親、先生たちに“食べ力”をPRして歩いています。